今年はあちこちでパルボウイルス感染症が出ている様子。
猫の幼稚園にもパルボウイルス感染症についての問い合わせが数件ありましたので、猫の幼稚園での現在の考え方と対応について、HPに纏めております。志を同じくする皆さんのお役に立てれば光栄です。
「猫の幼稚園 感染症対策」
そんな中とても気になる事例があります。
先日やって来た新入生3匹。
ブラックスモークのにしん、愛称にいにいは生後3.5ヶ月位。
多分姉妹と思われる二匹はキジ白のこはだとキジのきはだで、生後二ヶ月ちょっとかな。
実はきはだとこはだ、もうちょっとで安楽死されるところでした。
5月中旬に相次いで保護されたこはだときはだ。
こはだ風邪症状がでていて、きはだはずっと軟便で、こはだが保護後3日後に元気消失、翌日二匹とも通院。
通院途中にきはだが便をしたのでその便を使って犬用の簡易パルボ検査をしたら「陽性」
元気のないこはだもパルボと診断されてそのまま入院、きはだは接触のあったにしん共々それぞれ自宅ケージで隔離。
ところがパルボと断定されたこはだは、下痢嘔吐の症状がない為、翌日退院。
パルボから生還出来た事を喜びつつ、自宅で隔離が続くはずだったのですが…
あろうことか、パルボと診断された二匹を安楽死すると言い出した保護主。
理由は、「パルボに掛かった猫は一生ウイルスを排出し続ける。だから二次感染は必ず起きる。」と主治医に言われたからだとか。
そして彼女は、同じ様にパルボウイルス感染症と戦っている子猫達を保護している鶴見緑地チームのライムさんに、主治医に言われた事を伝えました。
それは、彼女にも自分と同じ様に回復期にある子猫達を安楽死するようにということなのでしょうか?
午後になって、その話が私の耳にも入りました。
耳を疑いました、退院したと聞いていたのに、いつのまに安楽死を選択する程重篤な症状になっていたのかと思いました。
でもよくよく話を聞くと、そうじゃない。
一生、ウイルス排出し続けるなんて、初耳です(笑)
それが正しいなら、世の中もっとパルボが蔓延していて、外猫達なんか今よりずっと数が少なくなっているのではないでしょうか?(笑)
だって、パルボから生還した猫さんを、一生隔離している人って一体どの位の数いらっしゃるんでしょうね?
隔離されていない猫さんが出したウイルスを、飼い主さん達がどんどんバラ撒いてるってことなら、ワクチンしてない外猫さんはどんどんパルボに感染して亡くなってるはずですもんね。
それよりも、回復期にある猫さんを、安楽死してしまおうという発想が、私には理解出来ません。
彼女は確かに、多くの外猫さんに関わっているから、パルボ感染と聞いた時に、感染拡大しないよう細心の注意をとお願いしました。
こちらでの今迄の対応を伝え、消毒除菌の話をしました。
彼女は前向きに頑張っている様子だったし、とんちゃんとのメールのやり取りで積極的だった様に思います。
でもその結果が、回復期にある猫さんの安楽死…
今迄の外猫さん達に対する彼女の行動力には心から敬服しています。
でも今回の事だけは、どうしても納得出来ないんです。
なので、猫の幼稚園で今後のお世話をするべく、譲って頂きました。
応援者の皆さんや仲間達には、もしかするとわざわざパルボ感染の猫さんを受け入れて、園児と猫の幼稚園を危険に曝すのは良しとしない方の方が多いのかもしれません。
でもごめんなさい、どうしてもその侭にしてはおけませんでした。
私は安楽死を認めないのではありません。
私自身が仲間に勧めた事もあります。
飼い主さん達の最期の愛情表現としての安楽死は、最善の選択である場合が多いと思います。
だけど今回の場合はどうなんでしょう。
二次感染が防げない、と考える前に、なぜ対策を取らないのでしょう。
実際に彼女はその対策をとっていたはずなのに、なぜ急にやめてしまおうとしたのでしょう。
感染拡大を恐れるのは当たり前です。逆に甘く見ていてはいけないのだと思います。
そしてウイルスという目に見えない相手に対抗するのは、心底疲れ果ててしまいます。
経験している者だけが分ることです。確かに精神的にも肉体的にも追いつめられる日々なんです。
でも私達人間側がきちんと管理すれば、間違いなく二次感染は防げるはずです。
だから、彼女の判断に納得出来ず、全く関係のない猫さん三匹を迎え入れる事にしました。
意地でも二次感染させないで、無事三匹を卒園させる、と密かに決意して、次の日の6月3日、とんちゃんと二人で猫さん三匹を迎えに行く事にしました。
迎えにいったその足で直ぐにベルさんに走りました。
今迄の経緯を考えてみても本当にパルボ感染かどうか怪しいと考えていましたし、獣医師の目から見た三匹の状態を確認したかったのです。
こはだもきはだも、食欲旺盛で下痢もなく、元気にしています。迎えにいった時だけがそうなのではなくて、一泊入院の際にも下痢嘔吐なし。
よくよく事情を聞くと、犬用簡易検査キットで陽性と出たけれど、白血球の数値は調べていないし、退院後も何の処置もなし。
こちらで入院させている間に、三匹の糞便を外部検査機関に提出して貰い抗原検査することにしました。
にしんだけはパルボ疑い止まりで、向こうでの簡易検査で陰性であったこともあり、猫の幼稚園に一足先に入園、隔離室で過ごしました。
入院した二匹は、念の為別々のケージに入れて貰いましたが、入院三日目には症状が全くない事から一緒のケージになりました。
そして6月10日、三匹の抗原検査の結果が出ました。
陰性です。
加えて入院中の白血球の数値は、こはだ15000、きはだ14800でどちらも正常値でした。
なので、三匹はパルボ陰性として里親募集を開始致します。
早速昨日ワクチンと共に猫エイズと猫白血病の検査を済ませました。
こちらも陰性です。
こはだ&きはだは、まだ若干人慣れ発展途上のため、もう暫くはケージ中心の生活ですが、にしんは早速リビング放牧となり、大喜びで他の園児と走り回っています
今回は血液採取しての抗体検査は行いませんでしたが、抗原検査の結果から考えられるのは
1.パルボ感染と断定された二匹は、一度もパルボに感染していない。
犬用検査キットの正確性を疑わざるおえない。
2.二匹は確かにパルボに感染したかもしれないが、症状も軽く早い段階で治癒した。なので感染した個体からのウイルス排出期間は、2週間程だと考えられる。
だと考えています。
今もしもパルボウイルス感染症にかかり、回復期にある猫さんをお世話されている方がこのブログをご覧頂いているなら、どうか最期迄諦めないでいてください。
ほんの数週間、厳戒態勢で頑張れば、必ず希望が見えてきます。
パルボウイルスと闘う猫さんと一緒に、飼い主さんも最期迄闘って頂きたいのです。
1.のケースなのか、2のケースなのか、正直私には分りません。
獣医師さんの一人は1のケースであるとの考えですが、他の獣医師さん達は違うかもしれません。
でもどちらでもあっても、二匹は命拾いをしました。
それだけ強運の持ち主なのでしょう。
そんな二匹を終生大事にして下さる方とのご縁を心待ちにしています。
保護主である彼女もまた、不要な殺生をせずに済みました。
今はなによりもこのことを喜ぼうと思います。