2014年01月21日

知って欲しい、隠れパルボのこと

今日は皆さんにぜひ知って欲しい、隠れパルボについて。

猫の幼稚園では過去何度かパルボウイルスに遭遇しており、特に昨年のパルボ遭遇では
・二週間の隔離期間を経たのちの発症
・症状がでないキャリア状態の猫の入園による廻りへの感染
と考えられる原因だった為、8月からの入園受け入れに際し、必ず保護して10日を目安にパルボウイルス遺伝子検査を実施してきました。

パルボウイルスの検査には、病院ですぐに実施できる簡易検査もありますが、これは犬用パルボウイルスをチェックする為のもの。
猫用のものは開発されていないんです。

加えてあまり知られていない事実なのですが、この簡易検査で検査する際に、採取して使用する糞便の量によって、検査結果が違ってくることが判っています。

協力して下さっているある獣医師さんから頂いた資料がこちら。

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クリックで拡大します。

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同じ検体の糞便であっても、このように検査する量が違うと結果が違って来てしまいます。

これ、意外としらない獣医師さんが多いんだそうです。
怖い事実ですよね。


一方遺伝子検査は糞便を直接検査機関に送るか、綿棒を使って肛門内の組織を採取し検査するか、または血液を採取して検査するかの方法になります。

猫の幼稚園は綿棒を使って採取する方法を推奨します。
糞便はトイレ内のウイルスを拾ってしまう可能性があるから、隔離ケージに数匹入っている際には不確かな結果になります。
血液は子猫の場合採取が大変。

なので、この綿棒を使っています。

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CSIのドラマみたいでしょ。
市販しているものではなくて、提携病院にお願いして検査機関から多量に取り寄せて貰っています。


さて、実施しはじめた遺伝子検査ですが、夏から今迄約70匹の検査を行った結果、判って来たこと。

隠れパルボの存在です。

例えば、猫エイズキャリアや白血病キャリアのように、ウイルス暴露して感染しているけれど、全く症状がでないままの猫さんが存在するということです。

ある程度パルボを知っている方なら、「症状がでないのはワクチン接種してたんじゃないの?」と思われるかもしれませんね。

そうじゃないんです。
保護された子猫でもこの隠れパルボだった子がいます。

致死率の高い感染症で、地域や施設が全滅することだってあるパルボだから、自然治癒するなんてありえない、と昔獣医師さんと話したことがあります。
でもウイルスもばかじゃないから、宿主全滅させてばかりだと自分達も生き残れないわけだし、野外株発生の地域では数ヶ月で集団感染が自然に収束すると言われていることからも、やはりキャリアになっても発症しない猫さんは少数いるのですね。

この隠れパルボの猫さんは、全く症状がでません。
でもウイルスの排出だけは毎日まいにち続いているんです。
猫の幼稚園で確認した事例では、最長4ヶ月。
早ければ一月後の遺伝子検査でウイルス排出が治まっています。

遺伝子検査はその精度故、非常に微量のウイルスにも反応します。
排出終了間際のウイルス残骸であっても、陽性と出ます。

このウイルスが他の猫に感染するのかどうかは、意見が分かれるところです。
確かに、全ての隠れパルボ猫さんのウイルス排出が、強力な感染力を持っているとは思えません。

でも猫の幼稚園のような環境では感染力ありとして考え対応するのが妥当でしょう。

隠れパルボ猫さんのウイルス排出量がごく微量であったと仮定しても、この期間に、運悪く他の猫のうちワクチン未接種だったり、他の感染症にかかっていて免疫が弱っていたり、老猫や子猫だったり…に感染してしまったら。

新しい宿主の身体で増殖し始めたウイルスが、新たに排出されていきます。

その結果は、パルボウイルス感染症の蔓延。



誤解を受けやすいのは、ワクチン接種していればパルボは怖くないって意味。
今迄の経験から鑑みて、ワクチン接種していてもウイルスに暴露されればパルボに感染はするんです。
ただ、発症する確立が少なく、ウイルス排出も3週間程度で治まるようです。


だから、先住猫さんはワクチン接種万全だからと思って対応を間違えると、やっぱりウイルス蔓延の結果になります。


保護施設では2〜3年毎にパルボに遭遇すると言われているのもこういった事情からなのかもしれません。



さて、約70匹の保護猫さんの遺伝子検査を実施したうち、なんともう既に三匹の保護猫さんでパルボ陽性の結果がでています。
20〜30匹に一匹の割合で隠れパルボが存在している結果です。
どの子も全く症状のない元気な個体です。
下痢も嘔吐もなく、遺伝子検査しなければ、パルボを疑うこともなかったでしょう。
もしも遺伝子検査を実施しないで、猫の幼稚園に受け入れていたら、また他の子猫達に感染させていたかもしれません。


この隠れパルボ猫の確率ですが、地域によって非常に数値が違うことになります。
猫の幼稚園が受け入れしている地域は、大阪〜神戸が多いのですが、一部地域では1/20以下の確率、少ない地域では1/50以上の確率なのかもしれません。


どうぞ、外猫さんに関わる皆さんがこの事実を知って、今迄以上に警戒して頂きたいと願います。
そしてもし、不幸にもパルボ猫さんと遭遇してしまったら、全力でその猫さんと廻りの猫さんを守ってあげて下さいね。


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posted by いよだとばん&むう at 23:47| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
獣医師ではありませんが、免疫寛容という言葉を聞いたことはありますでしょうか。
ママが妊娠中にパルボウイルスに感染すると胎盤を経由して胎児が感染してしまいます。この時、胎児はウイルスを外部侵入と認識しないため体内に受け入れてしまうのだそうです。感染した週数にもよりますが、妊娠初期の場合は子宮に吸収されることもあれば、正期産でミイラ化した胎児が分娩されることもあるそうです。無事生まれた子猫は免疫寛容となりウイルスキャリアとなります。私の調べた限りでは最長で8カ月ほど排出していた例があるそうです。
成猫が長期ウイルスキャリアになるのはちょっと分かりませんでした。
Posted by 猫好き at 2021年02月18日 20:00
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